憧れの職業と言われる薬剤師、実はなるのもなってからも大変

薬剤師という職業は現在非常に人気が高く、様々な大学が薬学部を新設している状況でもあります。
確かに、時給が高く、身体的負荷が医療系としては低いというイメージがあります。
資格職であることから、勤務先が自分に合わなければ転職することが容易であったり、ある程度は自分の要望する勤務体系を選べる自由さも人気の要因です。
実際に子育てのステージに応じて勤務先や勤務形態を変化させて柔軟に対応されている方も多くいらっしゃいます。
そのように一見魅力的な薬剤師という職業ですが、実際は大学の薬学部に入学した時点から、困難な道のりが待ち構えています。
まず、薬剤師の国家資格を取得するには、4年制の薬学部を卒業するだけでなく、大学院の修士課程に進学し、国家試験に合格した後、卒業する必要があります。
大学にもよりますが、修士課程に進学する時点で厳しいふるい分けが行われます。
お互いがライバルであることから、学生同士の関係も親密なものとはなり難いことを覚悟しなければなりません。
また、大学としては薬剤師国家試験の合格率を高めたいという思いもあり、学部に在籍中であっても、早々に大学院への進学を諦めさせて一般の就職を斡旋するケースも多いです。
晴れて薬剤師になってからも、決して安楽な道のりではありません。
病院勤務で、救急対応をしているところであれば、365日24時間体制のシフトに組み込まれます。
とにかくこの職業は、医師や看護師もそうではありますが、間違えるということが絶対に許されないということが非常に重要なポイントです。
もし自分の責任による調剤ミスが生じ、患者の命にかかわるような事態になれば、刑事責任を問われることになります。
その責任の重さは、調剤薬局であっても変わりはありません。
ミスへの恐怖から、メンタル不調に陥る薬剤師の方もおられます。
さらに追い打ちをかけるように、医療費削減を目的としてジェネリック医薬品が毎年のように多数発売されてきています。
ある一つの名前の医薬品と同じ効能を持った薬がいくつも発売されてくることで、知識も日々ブラッシュアップしなければなりません。
そのため、調剤薬局でも独自に勉強会を頻繁に開き、薬剤師の参加を義務化しているケースもあります。
実際に薬剤師の業務を知りたい場合はweb検索をしてみるのもおすすめです。
例えば処方箋を受け取ったときも薬剤師は瞬時にその妥当性を判断する必要があります。
もし頓服の処方であれば頓服は何回まで処方が可能か、薬剤師の特性や同時処方されている薬剤の日数を考慮して判断する必要があります。
もし、処方が妥当なものでなければ処方医に疑義照会をして確認する必要があり、これを怠ることも薬剤師の責任が問われることになります。
IT化の進展も薬剤師の負担を増やしています。
スマートフォンのアプリを使って処方箋の対応をしたり、お薬手帳の機能を持たせることも当たり前になってきています。
患者の高齢化も負担を増やす要因となっており、認知機能の低下したお年寄りが一人で来られた場合など、正しい情報をいかにお伝えするかといった点も非常に重要になってきますし、訪問看護の現場でも、毎日の服薬を正しく行っていただくために、あらゆる工夫をしなければなりません。
対人業務であることも、薬剤師個人のコミュニケーション能力が問われるところです。
基本的に何らかの病気を抱えた方と常に対峙しなければならないこと、その中でもミスは絶対に許されないこと等、そういった点に大きなストレスを抱える方がおられるのも事実です。
やはり、医療人として患者に寄り添い、かつ使命を全うしていく覚悟が要求される、厳しい職業であると言えるでしょう。